格闘ゲームから離れた理由 ~ “楽しむこと” と “勝つこと” の境界線 ~

GGシリーズを初めてプレイしてから、もう何年経つだろう。初めてプレイしたのはアーケードのGGXで、ある時から夢中になりGGXXGGXX#Rと真剣にプレイしてきた。

実のところ、GGXX/ が稼働された頃からGGシリーズを真剣にプレイすることから離れていた時期がある。あれだけ夢中になっていたのに、毎日のようにプレイしていたのに、離れてしまったことには理由がある。

 

ー 楽しめなくなっていた ー

 

私は “楽しむこと”“勝つこと” は必ずしもイコールではないと考えている。好きでやっているゲームなんだから、楽しまなければいけない。自分の中ではこれが信念であり絶対だ。しかし、真に楽しむためには勝つことも求めなければならない。長い間格闘ゲームをやってきた今そう思う。

  

“負けたけど楽しい” この感覚は、格闘ゲームを真剣にプレイしたことのある人なら誰もが1度は経験したことがあると思う。もちろん悔しい気持ちは残るけれど、充実感に満ちた敗北だ。

この感情が好きだった。対戦相手からそう言ってもらえることが本当に嬉しかったし、自分がそう言える試合が出来た時の充実感は幸せだった。勝敗を決めなければならない分野において負けた側がそう言えるのは、自分の力を出しきることができ、納得した上で相手を讃えることができたからだろう。それはお互いがお互いを認め合うことができるし、またやりたいと思える。このサイクルこそ対人の醍醐味だと思っている。

 

話を戻そう。私が格闘ゲームから離れた理由である “楽しめなくなっていた” 感覚。昔よりも勝てるようになっているのにそう感じるようになっていた。いや、正確には “勝った” という感覚以外の楽しさがわからなくなっていた。

 

ゲームの仕様も分からないけど楽しかったあの頃。好きなキャラクターを格好良く操作してみたかった。練習したことが実践で出来るだけで嬉しくて益々夢中になった。勝てなくて、勝ちたいと思うようになった。そしていつからか、勝つことだけを求めるようになっていたのだ。

 

当時の自分が考える強さとは、一方的に完膚なきまでに抑え込むことだった。ある種恐怖心にも似た圧力を相手にかけ、先手を取り相手の自由を封じ込む。勝つためならこれは正解の1つだろう。ただある時ふと思った。「これをやられている方は楽しめているのか?」と。

勿論、同等のレベル以上の相手ならそんなことを考える余裕はない。しかし当時は人口も非常に多く、やり続けた経験値から自分もある程度強くなることができていた。そのため全体数から見てもそこそこ勝てるようにはなっており、ゲーム性も加味して一方的になり易い試合というのが多かった。

 

自分が練習してきたことを披露することができない試合もあるのにお金を入れて対戦を続けてくれる。そして自分は “分からせる” かのようなプレイをし続ける。自分のやりたいことを押し付けるだけならCPUでもいいはず。それなのにそれを人間相手に求めてしまう。それはエゴであり、優しいものではないだろう。

そう考えた時、凄く虚しくなった。格闘ゲームを夢中でやり始めた “楽しい” という感覚から程遠い。楽しいからやっていたものが、勝つこと “だけ” に意識が向いたことで、自分に取って( おそらく相手にとっても )100%楽しいものではなくなっていたのだ。

 

そうやって始めた頃に感じていた面白さが分からなくなり、自然と離れ、やらない時間が何年も続いた。ACやAC+Rなどが出て、時々触ってはいたけれど昔のように本腰を入れてプレイすることはなかった。この頃はあくまでも楽しんでプレイすることだけを意識していた。

GGXrd Signの家庭用発売をきっかけに改めてやり込むようになったけれど、あの時の気持ちは今も忘れずに大事にしている。何かを始める際に生まれたポジティブな原動力は大切にしてあげなきゃいけない。矛盾しているようだけど、楽しみ続けるためにしなければならない努力もある。

 

ACの頃にミカドでシングル大会に出た時の動画。押田さんとの試合後にお互い「面白かった!」という言葉を掛け合えたのを覚えてる。

 

格闘ゲームだけじゃなく、何かに夢中になっている人は、その人がそれを “楽しい” と思っているからやっている。その楽しいは純粋で貴重な感情だ。ちょっとした自分の成長で楽しめる人だっているだろう。お気に入りのキャラクターを操作できることが楽しくて続けている人もいるだろう。勿論、勝つことが楽しいと思う人だっているだろう。

幸いにも今は情報が多い環境で、調べれば情報は出てくるし、ちょっと勇気を出せば教えてもらうことだって出来るだろう。反面、伸び悩んでいる人にとっては自分を何かと比較し易い環境にもなっていると思う。

決して焦らないで欲しい。そして自分の “楽しい” に純粋であって欲しい。できなかったことができるようになった時の “楽しい” を思い出して欲しい。“自分にとっての楽しい” を貫き通せば結果は後から付いてくる。そして自身の楽しいが実った時、それは魅力的なプレイスタイルや結果となって返ってくるものだと思います。

EVO2018の思い出⑤ 〜終わりと始まりは背中合わせ〜

予選を経て疲れきったはずの身体なのに、脳はゆっくり眠らせてくれない。悠長に寝ていられる訳がないんだ。この1年、ギルティに対して費やしてきた時間はこの日のためにあったのだから。

 

時刻は 2:30。会場入りの待ち合わせは 8:00 だが、すっかり目は覚めている。丁度その頃エンさんも目が覚める。トレモをやらせてもらっていると、暫くしてしておみちゃん、続いてナゲさんも部屋に来て朝から4人で対戦してた。

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時間を迎え会場入り。選手しか通れない道を歩かせてもらうことに興奮がないと言えば嘘になる。あの時の心臓は、これから試合を迎えることよりも壇上に立てることに高鳴っていた。

 

控え室での待ち時間を経て念願の壇上へ。去年は眺めているだけだった舞台に立つことができる喜びは背中を通して伝わってくる。胸を張って歩いた。運ぶ足の1歩1歩さえ大切にしたかった。壇上から見る観客席は感動的な光景だった。ゲームをやっていてこんな景色を望めるだなんて、あの時の自分は思っていなかっただろう。

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初戦のまちゃぼーさん戦。最初からEVO JAPANの時と違う試合展開を仕掛けて来たのと、大会用の強気な行動に面食らって一気に持っていかれたのが響いた。2回戦目は取り返したものの、最後は後手に回らされる中、ペースを握らせないSスタンで見事に出鼻を挫かれた。その結果プレッシャーや焦りによって、ガードが脆くなってしまったのが敗因に繋がったと思う。体制が整う前にやられてしまった感じ。まちゃぼーさんの人間力も勿論、試合展開作りの上手さが勉強になった。

【 対まちゃぼーさん戦 】Twitch

 

続いてのナゲさん戦は “もう負けられない” というプレッシャーからか、自分で思ってたよりも固くなっていたように思う。以前考えていた対ナゲさん戦の取り組み方などを頭の中で整理しないまま試合を始めてしまった。あとで思い返すと視野がかなり狭くなっていた。立ち回りの中でレレレに被弾した時は画面2割くらい視界から飛んでいたのを覚えてる。ナゲさんの勝負強さと心臓の強さ、技術面よりも精神的な強さが勝負を分けた試合だったと思う。

【 対ナゲさん戦 】Twitch

 

自分の中で持ち味を出し切れなかったのが残念だったけど、それがあの時の自分の実力だ。甘さを実感した瞬間でもあったけど、まだまだ伸び代があると感じた瞬間でもあった。

 

壇上で繰り広げられた試合は素晴らしいものばかりだった。Lost Soulは本当に強く上手かった。JDの仕様変更を最大限に活かした立ち回りで、チャンスをしっかりものにしていた。2冠を達成したおみちゃんは流石の強さだ。最後の試合は圧巻で、柔と剛を併せ持った彼らしい強さが全面に出ていた。それと同時に、あの圧力はまちゃぼーさんでさえ崩れてしまうほどのものなのだと驚かされた。

 

Lost Soulさんに負けてしまったあとのナゲさんが好きだった。悔しい気持ちをちゃんと持ちながら相手を讃えていたんだ。覚悟を持って臨んだ試合、それもあんな大きい舞台で、自分の敗北が決まった瞬間に悔しい笑顔で讃えられる。この人と次の闘神祭を組むことができて本当に良かったと思った瞬間だった。

 

またもう1人の闘神祭チームメイトであるライオンキングも、EVOの予選が始まる前に私たちに力強い声援を送ってくれた。あくまで全員をライバルと認めた上で中立の目線から応援してくれる。置かれている状況に合わせて寄り添うのではない、芯のある付き合い方だ。

 

次の闘神祭はこの2人と一緒にチーム「キングクラッシュ」として優勝を獲りにいく。ギルティのことを “かなり” 好きな3人だ。当たる人たちは覚悟していただきたい。

 

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表彰式を終えて、案内してもらったVIP席から舞台を見下ろした。数えきれない人たちが熱狂してる。ギルティをやっている人もやっていない人もいるだろう。ただ1つ共通してるのは格闘ゲームが好きな奴らばかりだってこと。あんなに沢山の人たちに見てもらえて嬉しかった。またあの舞台に立てるよう、次は優勝できるよう頑張るんだ。

 

取材も終わり、EVO2018におけるGGXrd Rev2のイベントは全て完了した。でもまだ俺のEVOは終わっちゃいない。

 

今回の旅で最初で最後、おみちゃんも含めてモガ班全員集合でお昼を食べに行く。去年行ったパリスのビュッフェだ。じゃがいもと肉ばかり詰め込んだ。全く反省はしていない。しかし予想に反してすぐに満腹中秋が刺激された。楽しみにしていたパリスのビュッフェでこの体たらく。あまりにも入門な立ち回りである。

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食後に食べた「苺のクレープ」は最高だった。写真を撮り忘れてしまうくらい夢中になっていた。慣れた手つきで焼き上げられた生地に、煮付けられたトロトロの苺をたっぷり乗せる。さらにその上に乱暴に盛り付けられた山盛りの生クリーム。もう受け付けないはずの胃袋はアクセルを全力で踏んでくれた。お前もこれを待っていたんだなって嬉しかったよ。アイスクリームを添えるアドリブもきかせて一瞬で平らげた。美味しかった。

 

食事の後はお土産を見つつホテルに戻り仮眠。流石にくたびれていたようで、あっという間に眠りについた。

 

‥数時間後‥ やっと動いてくれた目覚まし時計で目を覚まし、エンさんを起こしてアニメスイートに行く。これがラスベガス最後の夜だ。

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Hotashi・Lost Soul・Daruさん・Bearsさん・GREATFERNMANさんと、他にも沢山の海外勢たちと対戦した。Hotashiは普段の行動からは想像も付かないけれど、部屋にいる日本勢に聞いて回って飲み物を取ってきてくれたりするタイプで、実はすごく気を使う人物だ。そのお礼と言ってはなんだけどマネーマッチで倒しておいた。


帰りの時間が迫る中、みんなギリギリまで対戦を楽しんでいた。帰り間際に GREATFERNMANさん経由でめっちゃ美人の海外プレイヤーにサインを求められたのが嬉しかった。サインを見て肩を縮こませて小さくガッツポーズをしていた姿がとても可愛かった。帰り際で慌てていたせいもあって考えもつかなかったけど、写真撮らせてもらえば良かったと後悔してる。

 

部屋に戻り荷造りを終え、タクシーに乗り空港へ向かう。 去年も見た景色だ。ネオンが横に流れていく様子はセンチメンタルにさせる。数日だけの楽しかった時間が頭の中でネガフィルムのように写し出されていた。

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帰りの飛行機ではずっと寝ていた。どんな夢を見たかは覚えてないけど、悪い夢じゃないはずだ。

 

大きな問題もなく無事に帰国。皆んなで集合写真を撮って、帰り際に新しい約束の1つも取り付ける。こうして私のEVO2018は幕を閉じた。 

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一瞬の感情は美しい、どんな形でも。てれやんの負けた瞬間の落胆ぶりも、勝った瞬間のはしゃぐ様も全力で臨んでいるから生まれている。まちゃぼーさんにはやっぱりギルティをやって欲しいと思ったし、今回のEVOでは色んな人をより好きになれた。そして格闘ゲームが素晴らしいものなんだって改めて実感できた。

 

全力で打ち込んでいるから、あれだけ感情を表現できるし誰かの心を打つことができる。格闘ゲームは、真剣な表情が笑顔に変わる瞬間が訪れる。その一瞬は宝物だ。それが出来る人、それを見ることができる場所、それを見て突き動かされる誰かの心。大袈裟かもしれないけど、その一瞬があるだけで生まれてきた意味があると思う。

 

最後まで読んでくれてありがとう。これを読んで来年のEVOに行きたいと思ってくれる人がいると嬉しいです。

 

EVO2018の思い出④ 〜予選開始も運命は残酷なもので〜

長い1日が始まった。

 

日付をまたぐまで起きていた前日がある。それなのに思いがけない方向で目覚まし時計は機能しなかった。時刻は 7:00、予定時刻よりも早く目が覚める。楽しみな気持ちは勿論あるけれど、この日は不安の方が勝っていたんだろう。楽しみが強いならきっと眠れていない、そういう体質だ。

 

予選は開始時間を4つの組に分けて行われる。通称[ 8:00組 ][ 10:00組 ][ 12:00組 ][ 14:00組 ]と呼ばれており、自分は 10:00組 だった。しばらく考え事をしながら寝起きの脳に血を巡らせる。居ても立っても居られなくなり、8:00 組の観戦に行く予定だったモガちゃんに連絡を取り、PS4とモニターを借りに行くことに。ちょうどその頃 8:00組 である同室のエンさんも目が覚めた。激励の言葉を交わし暫しのお別れを告げる。

 

足早にモガちゃんの部屋を行き来し、部屋に戻るとエンさんはもう出発した後だった。同じ 10:00組 の七味ちゃんと待ち合わせ時間を決めたあと、時間までコンボとセットプレイをひたすら繰り返していた。不安を掻き消すかのように。

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待ち合わせの時間より少し早めに部屋を出て朝食を済ませる。大会の時は、本番の約2時間前に何かしら食べてから臨むようにしている。何も食べずに望んだり飲み物だけで済ませたりと色々試したが、少なからず糖質を摂取しておくのが自分には一番良い方法らしい。その後、七味ちゃんと合流し会場へ。会場に着くと着々と予選は進行している。

 

10:00組 の予選が始まった。初戦はシード枠だったので、WinnersでPool抜けをするには3回勝ち抜く必要があった。レイヴン・アクセル・梅喧と順に戦い無事に通過。初戦とPool決勝が配信台だった。

 

【 対レイヴン 】Twitch

【 対梅喧 】Twitch

 

Pool後の試合は 16:00 開始と聞き、一旦部屋に戻り仮眠。少し休んだ後、エンさんと一緒にふもさん&けだこさんの部屋で対戦をしつつ会場に戻る。

 

Pool抜け初戦の相手は ShinSin氏のアンサー。想像以上に強く苦戦を強いられた。徹底して的を絞らせない立ち回りで捉えづらかった。起き上りも安易に空蝉に頼らずに、丁寧なガードを盾に動いていたので、アンサー用の起き攻めがあまり機能せず、簡単にダメージを取れるはずのポイントが少なかった。今回のEVOで初めて名前を知ったけど、上手い系のプレイヤーで今後も伸びてきそうなポテンシャルを感じた1人だ。

 

続いての相手が決まる「 ナゲさん vs おネギ 」戦を見守る。本当に熱い試合だった。この試合を配信台でやらなかったことが勿体なかったと思っている。おネギの “勝つための執念” があらゆる部分に垣間見えた試合だった。1点読みの開幕2HSや割り切った6Pなど、後で聞けば相手を格上と認めた上で普段やらない選択肢を取り入れたそうだ。一度はナゲさんに傾いたペースを強気の行動で再度握り返してもぎ取った執念の勝利である。

 

そしておネギとの試合。前日に対戦してたこともあり、手の内はお互いある程度分かっていた。甘えた行動は咎められていたので、頼らずに慎重に立ち回った。立ち回りの有利を活かしチャンスをものにすることができた。 

 

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そこから暫く時間が空き、Winnersでのベスト8を決める最後の闘い。相手はエンさんだった。奇しくも同室の相手、運命とは時に残酷なものである。なんとか勝利することはできたけど、負けていてもおかしくない内容だった。緊張もあったのか、前日に対戦していた時よりも防御面が脆く試合中に改善できないと判断した。そのため攻撃面に意識を振って誤魔化す試合展開にしたのだけど、途中でこっちの焦りがバレてしっかり対応された。

 

【 対エンさん 】Twitch

 

壇上行きが決まった瞬間は本当に嬉しかった。今年のEVOに出場する上で掲げていた目標の1段目だ。目標と約束は叶えるためにある。

 

その後は翌日に必要な写真を撮るためにバックヤードへ移動。バックヤードで、同じくよしもとゲーミング様のスポンサードを受けたkuboさんと遭遇。DBFでベスト8を決めたらしく、見たことのない笑顔で喜んでいた。見てるこっちまで嬉しくなる笑顔だ。

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ベスト8での集合写真。まちゃぼーさんは時間の都合でご一緒できず。。!

またこの日、個人的に1番印象的だったのはふもさん。カズノコさんとのLoosersベスト8をかけた最後の試合に勝った時の喜びは、背中まで伝わる “もの” があった。カズノコさんも清々しい表情で、負けてしまったけど格好良かった。

 

真剣に取り組んでいたからこそ生まれる感情表現は、誰かの気持ちさえも揺さぶるものだ。ゲームとはいえ真剣に闘っている。だからこそ感動が生まれる。自分もそういう試合がしたい。そしてできればその上で勝ちたい。

 

翌日は壇上での決戦だ。感動できる試合ができるよう、そして勝てるよう祈りながらこの日は眠りについた。

 

EVO2018の思い出③ 〜本番の前日は寝る・食べる・ ギル〜

いよいよEVOが始まった。この日は出る種目がないので、予定通りモガ班のみんなと合流し昼食へ向かう。最寄りのホテルまでタクシーで移動し、冷房の効いたロビーを快適に闊歩する。

 

当初行く予定だった場所を変更し、Twitterで見つけた情報をもとに MarlinPie おすすめのビュッフェ Wicked Spoon へ。少しの間とはいえ炎天下の中を歩く、地獄のRPGが始まった。

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昼間の日照りは自然の力を知るには十分だった。初日に体験した夕暮れ時でさえ息苦しかったのに、空を見上げることは勿論、アスファルトで跳ねかえる日差しと目を合わせることも辛かった。

 

言葉にならない暑さ、行き交う人は誰も笑っていない。上を向いて歩くには眩しすぎて、うつむき加減で歩み続ける。するとどうだろう、アスファルトには大人のステッカーがあらゆるところに散りばめられているではないか。こんなところにも希望が落ちてる、それがラスベガスって街らしい。

 

炎天下の下で半分全裸の女性が2人、懸命に客引きをしている。この暑さの中で唯一笑顔だったのは彼女たちだけだったかもしれない。弱点にシールを貼り付けただけの無防備な装備。この日差しの下で生きるにはあまりにも幼すぎた。ドラクエの “えっちな下着” よりも防御力の低そうな装備のミネアとマーニャだ。

 

「 彼女たちはどれだけ強力な日焼け止めを使っているんだろう?」

「 これだけ過酷そうな仕事で幾ら貰っているんだろう?」

「 これは占い師ではない、ぱふぱふのMOBだ。」

 ‥などと考えていたけれど、そんなことより日陰を探すのに精一杯だった。頭の中で日差しから逃れる最短ルートをナビしながら目的地へ向かう。そんなことを考えるだけでも歩くことが少し楽しくなるから面白い。

 

Wicked Spoon のあるコスモポリタンに到着。トラマナなんてない現実世界だ。一目散に冷気に逃げる。入り口付近には色取り取りのお酒を置いたバーカウンターがあり、外との温度差をより強く感じた。この先に目的地があると知らないと引き返してしまいそうな一本道を進む。道すがら、エンさんが謎のオブジェに囲まれたセーブポイントで記録を上書いていた。 

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少し歩くと開けた場所に Wicked Spoon を発見し、数十分のRPGは終了。お洒落なロゴが印象的だ。

 

ここのビュッフェは最高に美味しかった。まず円卓にデフォルトで水が配置してあることに喜びを噛みしめる。この土地で当たり前のように出てくる飲み物と言えば、ピンクレモネードやコーラ、ジンジャーエールにスプライトと砂糖入りの炭酸水ばかり。私は普段から水を大量に飲むので、この配慮は本当に嬉しかった。

 

店内はオレンジ色のネオンに包まれ、明るく上品な雰囲気を醸し出す。ゆとりのある間取りに、積極的に気を利かせてくれる店員さんからも “ちょっといいとこ” な感じが出ていた。

 

ビュッフェってやつはいつだって楽しい。誰かが盛ってきた “美味しそうなもの” を見るだけでも会話が弾む。エンさんやおネギは野菜も摂取するバランス感覚を持っていたけど、私やタロちゃん、モガ美ちゃんのお皿は茶色にひしめいていた。

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*3枚目はあまりの甘さにやられている様子。

盛りに盛った様々なブラウンを平らげたあと、とっておきのスウィーツが待っていた。アイスクリームだ。ここのフローズンベリーヨーグルトのアイスが最高だった。許されるなら、グーニーズのチャンクみたいにケースを脇に抱えて頬張りたいくらいに美味しい。スッキリとして口溶けのいいフローズンヨーグルトにブルーベリーの濃厚な酸味と甘みが絡み合う。

 

もちろん “おかわり” をしたのだけど、2回目はチョコのついたディッシャーを使い回しされ私のアイスは汚されてしまった。白と紫だけのマーブリングなら美しかっただろう。しかしそこに紛れた焦げ茶色に溜め息が出たのも束の間、汚したはずのチョコも美味しいもんだから、行き場のない感情に尾崎豊するしかなかった。

 

ホテルに戻った後は一休み。寝る・食べる・ギル という単純な時間。それなのに充実感に満ちてしまう桃源郷だ。

 

夜は翌日から始まる本番に向けて、モガ班のみんなで対戦会。各々がどういう心持ちだったかは分からないけれど、楽しみや不安を心に秘めながらその時間をただ楽しんでいた。

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モガ班の対戦会が終了後、部屋に戻る前にエンさんと一緒にLOXさん・もっちーさんの部屋に寄って “追いギルティ”。おみGOD・押田さん・LOXさん・もっちーさんという恐ろしい面々と一緒に楽しんだ。

 

明日はいよいよ本番だ。心臓は間違いなく昂ぶっている。

 

EVO2018の思い出② 〜2日目は自由行動〜

..2日目..

初日の疲れのせいだろう。起きたのは昼近くで、その時にはもう同室のエンさんたちは出掛けていた。

 

この日はモガ班のみんなとは行動せず、メキシコの友人たち( Aira・Cachuchin )と行動していた。彼女たちとは去年のEVOで知り合い、それ以来時折連絡を取り合っている。EVO JAPANで来日した時には何故か渋谷のカラオケで “ザディぱみゅぱみゅ” の “にんじゃりばんばん” を披露したこともある。鮮やかに声が潰れてしまったけれど。

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ギルティをやっていなかったら出逢うことはなかっただろう。こういう出逢いを得る可能性があるだけでもEVOに来る大きな理由になるし、生きてる意味を実感できる。人と人との繋がりは何処に転がってるか分からない。それが大きな幸せになることだってよくある話し。

 

マンダレイのフロント付近で合流し、EVOの本エントリーを済ませてからルクソールで昼食へ。ここで遂にハンバーガー童貞 in ラスベガスを卒業する。実は去年一度も食べなかった。「アメリカでハンバーガーを食べないバカがいるかよ!出てけ!!」と猪木氏に怒鳴られてもおかしくはない愚行である。

 

ポテトが美味しかった。野菜はジャガイモしか食べられないと嘆いていた昨日の自分を殴りたい。結局お前もジャンクフードの虜なんだって笑ってやりたい。炭水化物ってやつは食物繊維より分かり易くていい。

 

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 昼食後はマンダレイのプールへ行く。ホテル内に広がるビーチ。自分がいた場所は砂漠の真ん中ではなくオアシスだったと知る。プールには規模の大きい “波のプール” と “流れるプール” があった。流れるプールの速さはアメリカそのもので緊張感があった。楽しいけど怪我もできる。そんなスリルは嫌いじゃない。

 

またビーチでレイヴン使いのZegaと会った。Zegaは勉強中の日本語で挨拶してくれた。そういった気持ちは本当に嬉しい。そして気持ちは伝わるものだと再認識させられた瞬間でもあった。AiraとZegaからオリジナルのレイヴングッズを貰った。応援絵と同じ宝物。レイヴンを使ってきたギルティ人生の縮図だ。 

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*2枚目は2018年冬に撮影。

プールでのはしゃぎっぷりに想像以上の疲労を感じたので、部屋で一休みさせてもらう。仮眠後、Airaたちはシルクドソレイユを観にいき、自分はアニメスイート( スイートルームを貸し切っての対戦会のようなもの )へ。後で合流する約束を残して。

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自分が到着した時にはモガちゃんやてれやん、Bashiさんなど日本勢も多くいた。2時間ほど対戦した後でモガ班の皆んなと夕飯へ。夜に食べるピザは背徳感のスパイスが実に効いている。調子に乗って2枚注文したけど一番最初に平らげた。あのタロちゃん( ホット・スナック太郎 )をも差し置いてね。夕食を食べながら翌日の行動のミーティングをし解散。

 

その後、自分はエンさんと一緒にアニメスイートへ。途中LOXさんも合流する。Aira・Zega・Blazeたちと、レイヴンのミラーマッチを沢山やった。日本ではレイヴン使いは減ってしまっていたけれど、海外では昨年よりも増えている印象を受けた。これはとても嬉しいことだ。

 

結局最後までずっと対戦してた。その後は部屋に戻り就寝。ギルティが楽しいんだ。

 

EVO2018の思い出① 〜16時間を前借りしてラスベガスへ〜

楽しい時間はあっという間だ。長いこと生きているけどこの感覚だけはどうも慣れない。EVO2018が終わって数日経つ今日この頃、まだ旅の記憶が新しいうちに今の純粋な気持ちを留めておきたいから文字に残します。

去年初めて参加したEVO( The Evolution Championship Series )。今年2018年はよしもとゲーミング様のスポンサードを受けて参加させていただく形になりました。去年よりも高い順位を目標に掲げており、結果的にそれを果たすことができたのは幸いでした。

 

..初日..

羽田に着き、今回の旅を共にする仲間たち( エンさん・モガちゃん・七味ちゃん・タロちゃん・おネギ・TOMTOMさん )と合流する。通称モガ班と呼ばれるグループで、去年も一緒に行動させてもらった仲間たちばかりだ。

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出国前の準備を終わらせ、しばらく食べることのできない和食( とんかつ )を胃に詰める。キャベツをおかわりしたら想像を越えた量のキャベツを盛ってくれた。翌日から摂取できる野菜といえばジャガイモばかり。緑の野菜と食物繊維をお腹いっぱい摂取できた。ありがとう。

 

今年は去年よりも同じ飛行機で向かう仲間たちが多く、ちょっとした修学旅行のような気分だった。出発の前、去年行きの飛行機でよくしてくれたスチュワーデスのことを思い出していた。どんな顔だったかは忘れたけれど。

 

日本を出発し10時間、乗り継ぎのロサンゼルス空港へ到着。去年に引き続き荷物検査でアケコンが引っかかる。 パッと見た感じ武器にも映るから仕方ない。

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天板絵の作者はわしころさん。彼女の描く絵は最高にロックだ。かつてレイヴンをレクチャーしたことのある3人の魂( しいめ・マボさん・わしころさん )を勝手に背負って荷物検査を通過。

 

ロサンゼルスからラスベガスまでは1時間。16時間若返った体で欲望の大地を踏む。1年ぶりの景色は相変わらず見慣れないものばかりで、見るもの全てが大きかった。勿論、バカみたいな暑さは笑えない。夕方とは思えない日照りは吸う息さえも疲れさせる。それでも心は踊っていた。しばらく続くここでの時間に。楽しいって分かっているから。

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到着後、部屋でのんびりする間もなくモガ班御一行でMGMグランドホテルへ移動。フードコートで各々食事を済ませ、目的の時間までカンジに興じる。

 

エンさんがスロットとブラックジャック相手に「こいつ何も起きねーし、時々終わらせにくる。」って言ってたのを聞いて爆笑してた。ちなみに自分も詰まされてしまった。ルーレットで倍プッシュしてた結果である。アカギの真似はしない方がいいなと思った。

 

このホテルに移動した目的はシルクドソレイユ KAを観るためだ。KAは本当に凄かった。360度回転する床を使った演出は圧倒的で、想像を超えた表現方法に度胆を抜かれっぱなしだった。

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ただ皆んな疲れていたから、合間合間で居眠りソレイユしてしまった。居眠りして見てない時間があるのにショーの区切りの拍手だけしていたのが恥ずかしい。本能的に謎の寝てないよアピールをしていたんだろう。

 

ホテルに戻った後は、2日後に控える本番に向けてタロちゃんの部屋でギルティプレイ。おネギとエンさんと結構長い時間対戦させてもらった。その後は部屋に戻って眠りにつく。

 

まだ始まったばかりだ。