EVO2018の思い出⑤ 〜終わりと始まりは背中合わせ〜

予選を経て疲れきったはずの身体なのに、脳はゆっくり眠らせてくれない。悠長に寝ていられる訳がないんだ。この1年、ギルティに対して費やしてきた時間はこの日のためにあったのだから。

 

時刻は 2:30。会場入りの待ち合わせは 8:00 だが、すっかり目は覚めている。丁度その頃エンさんも目が覚める。トレモをやらせてもらっていると、暫くしてしておみちゃん、続いてナゲさんも部屋に来て朝から4人で対戦してた。

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時間を迎え会場入り。選手しか通れない道を歩かせてもらうことに興奮がないと言えば嘘になる。あの時の心臓は、これから試合を迎えることよりも壇上に立てることに高鳴っていた。

 

控え室での待ち時間を経て念願の壇上へ。去年は眺めているだけだった舞台に立つことができる喜びは背中を通して伝わってくる。胸を張って歩いた。運ぶ足の1歩1歩さえ大切にしたかった。壇上から見る観客席は感動的な光景だった。ゲームをやっていてこんな景色を望めるだなんて、あの時の自分は思っていなかっただろう。

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初戦のまちゃぼーさん戦。最初からEVO JAPANの時と違う試合展開を仕掛けて来たのと、大会用の強気な行動に面食らって一気に持っていかれたのが響いた。2回戦目は取り返したものの、最後は後手に回らされる中、ペースを握らせないSスタンで見事に出鼻を挫かれた。その結果プレッシャーや焦りによって、ガードが脆くなってしまったのが敗因に繋がったと思う。体制が整う前にやられてしまった感じ。まちゃぼーさんの人間力も勿論、試合展開作りの上手さが勉強になった。

【 対まちゃぼーさん戦 】Twitch

 

続いてのナゲさん戦は “もう負けられない” というプレッシャーからか、自分で思ってたよりも固くなっていたように思う。以前考えていた対ナゲさん戦の取り組み方などを頭の中で整理しないまま試合を始めてしまった。あとで思い返すと視野がかなり狭くなっていた。立ち回りの中でレレレに被弾した時は画面2割くらい視界から飛んでいたのを覚えてる。ナゲさんの勝負強さと心臓の強さ、技術面よりも精神的な強さが勝負を分けた試合だったと思う。

【 対ナゲさん戦 】Twitch

 

自分の中で持ち味を出し切れなかったのが残念だったけど、それがあの時の自分の実力だ。甘さを実感した瞬間でもあったけど、まだまだ伸び代があると感じた瞬間でもあった。

 

壇上で繰り広げられた試合は素晴らしいものばかりだった。Lost Soulは本当に強く上手かった。JDの仕様変更を最大限に活かした立ち回りで、チャンスをしっかりものにしていた。2冠を達成したおみちゃんは流石の強さだ。最後の試合は圧巻で、柔と剛を併せ持った彼らしい強さが全面に出ていた。それと同時に、あの圧力はまちゃぼーさんでさえ崩れてしまうほどのものなのだと驚かされた。

 

Lost Soulさんに負けてしまったあとのナゲさんが好きだった。悔しい気持ちをちゃんと持ちながら相手を讃えていたんだ。覚悟を持って臨んだ試合、それもあんな大きい舞台で、自分の敗北が決まった瞬間に悔しい笑顔で讃えられる。この人と次の闘神祭を組むことができて本当に良かったと思った瞬間だった。

 

またもう1人の闘神祭チームメイトであるライオンキングも、EVOの予選が始まる前に私たちに力強い声援を送ってくれた。あくまで全員をライバルと認めた上で中立の目線から応援してくれる。置かれている状況に合わせて寄り添うのではない、芯のある付き合い方だ。

 

次の闘神祭はこの2人と一緒にチーム「キングクラッシュ」として優勝を獲りにいく。ギルティのことを “かなり” 好きな3人だ。当たる人たちは覚悟していただきたい。

 

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表彰式を終えて、案内してもらったVIP席から舞台を見下ろした。数えきれない人たちが熱狂してる。ギルティをやっている人もやっていない人もいるだろう。ただ1つ共通してるのは格闘ゲームが好きな奴らばかりだってこと。あんなに沢山の人たちに見てもらえて嬉しかった。またあの舞台に立てるよう、次は優勝できるよう頑張るんだ。

 

取材も終わり、EVO2018におけるGGXrd Rev2のイベントは全て完了した。でもまだ俺のEVOは終わっちゃいない。

 

今回の旅で最初で最後、おみちゃんも含めてモガ班全員集合でお昼を食べに行く。去年行ったパリスのビュッフェだ。じゃがいもと肉ばかり詰め込んだ。全く反省はしていない。しかし予想に反してすぐに満腹中秋が刺激された。楽しみにしていたパリスのビュッフェでこの体たらく。あまりにも入門な立ち回りである。

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食後に食べた「苺のクレープ」は最高だった。写真を撮り忘れてしまうくらい夢中になっていた。慣れた手つきで焼き上げられた生地に、煮付けられたトロトロの苺をたっぷり乗せる。さらにその上に乱暴に盛り付けられた山盛りの生クリーム。もう受け付けないはずの胃袋はアクセルを全力で踏んでくれた。お前もこれを待っていたんだなって嬉しかったよ。アイスクリームを添えるアドリブもきかせて一瞬で平らげた。美味しかった。

 

食事の後はお土産を見つつホテルに戻り仮眠。流石にくたびれていたようで、あっという間に眠りについた。

 

‥数時間後‥ やっと動いてくれた目覚まし時計で目を覚まし、エンさんを起こしてアニメスイートに行く。これがラスベガス最後の夜だ。

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Hotashi・Lost Soul・Daruさん・Bearsさん・GREATFERNMANさんと、他にも沢山の海外勢たちと対戦した。Hotashiは普段の行動からは想像も付かないけれど、部屋にいる日本勢に聞いて回って飲み物を取ってきてくれたりするタイプで、実はすごく気を使う人物だ。そのお礼と言ってはなんだけどマネーマッチで倒しておいた。


帰りの時間が迫る中、みんなギリギリまで対戦を楽しんでいた。帰り間際に GREATFERNMANさん経由でめっちゃ美人の海外プレイヤーにサインを求められたのが嬉しかった。サインを見て肩を縮こませて小さくガッツポーズをしていた姿がとても可愛かった。帰り際で慌てていたせいもあって考えもつかなかったけど、写真撮らせてもらえば良かったと後悔してる。

 

部屋に戻り荷造りを終え、タクシーに乗り空港へ向かう。 去年も見た景色だ。ネオンが横に流れていく様子はセンチメンタルにさせる。数日だけの楽しかった時間が頭の中でネガフィルムのように写し出されていた。

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帰りの飛行機ではずっと寝ていた。どんな夢を見たかは覚えてないけど、悪い夢じゃないはずだ。

 

大きな問題もなく無事に帰国。皆んなで集合写真を撮って、帰り際に新しい約束の1つも取り付ける。こうして私のEVO2018は幕を閉じた。 

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一瞬の感情は美しい、どんな形でも。てれやんの負けた瞬間の落胆ぶりも、勝った瞬間のはしゃぐ様も全力で臨んでいるから生まれている。まちゃぼーさんにはやっぱりギルティをやって欲しいと思ったし、今回のEVOでは色んな人をより好きになれた。そして格闘ゲームが素晴らしいものなんだって改めて実感できた。

 

全力で打ち込んでいるから、あれだけ感情を表現できるし誰かの心を打つことができる。格闘ゲームは、真剣な表情が笑顔に変わる瞬間が訪れる。その一瞬は宝物だ。それが出来る人、それを見ることができる場所、それを見て突き動かされる誰かの心。大袈裟かもしれないけど、その一瞬があるだけで生まれてきた意味があると思う。

 

最後まで読んでくれてありがとう。これを読んで来年のEVOに行きたいと思ってくれる人がいると嬉しいです。